高校生の研究

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JSEC(ジャパン・サイエンス&エンジニアリング・チャレンジ)2006 文部科学大臣賞・YKK特別賞
同2007 優秀賞

1:水流中における空気柱の発生についての研究

 

JSEC(ジャパン・サイエンス&エンジニアリング・チャレンジ)2006 文部科学大臣賞・YKK特別賞
同2007 優秀賞
水流中における空気柱の発生についての研究  H1〜H2年(結城明姫

小学校4年生のとき、自宅の風呂場の蛇口から流れる水流中に空気の柱ができているのを見つけた。「これは何だ?」と疑問に思ったことが始まりだ。

その現象とは、蛇口から流れる水流中に、約3ミリ程度の太さを持つ透明な柱が存在したことだ。その柱は蛇口内に取り付けられているゴミ取り用メッシュから下に向かって伸びており、時間が経過するにつれ徐々に長さを増した。当時、この柱が一体何であるのかを調べたところ、水流中に生じた空気の柱である事がわかった。しかし、小学校の頃は現象の面白さに惹かれただけで、どのような原因によりこの空気柱が発生するのかはわからなかった。そこで、中学、高校と、経験を重ねるごとに実験を積み重ね、一体なぜ空気柱は発生し、またどのような条件で伸びるのかを突き止めようと考えた。

その結果、空気柱が水温、蛇口のメッシュの形状の変化によって伸び方が変化する事が分かった。また、空気柱の発生原因については、空気柱の発生は金属管内であり特殊な装置を使わない限り不可視なため、実験及び考察を通して結論付けた。

それは密閉した管内に空気の泡が流れる事によって生じるというものであったが、JSEC2006において審査委員長より「もともと気泡が存在するのではなく、なんらかの原因で水流中の気体が気泡化する可能性」のご示唆をいただいたため、透明なビニールチューブを使用した空気柱発生の観察を行う事とした。

その結果、空気柱はメッシュ下面に突然発生し、この現象は気体を含む液体がメッシュに衝突して起きるキャビテーションであることが判明した。その際に管材質の違いによる空気柱の様子の差異に注目し、ビニールチューブ、シリコンチューブで空気柱の測定を行い、蛇口(金属管)と比較した。

温度、メッシュの形状に依存する様子は類似していたが、空気柱の形状、長さ、安定性の面で大きな違いが確認された。この形状、長さ、安定性の違いが管の摩擦にあるのではないかと予測し、さらにアクリルチューブをくわえて定性的に摩擦の違いを実験、Acが、予想される変化や空気柱の形状を示したことから、摩擦による管内の速度分布とそれにより生じる圧力が長さと形状を決定付けている事を確認した。

また、空気柱発生に流速がかかわるのか実験し、18℃以上ならば1m/sec程度の流速が発生には必要なことが確認された。

2006年度に予想した「メッシュ部分の管を平行、及び上方に向けた場合」についても実験し、平行の場合は斜め上に、上方の場合は上向きに空気柱はちぎれた。

 

(管材質と空気柱の特徴に関する実験)

水道の蛇口からメッシュを取り外し、透明なビニールチューブ内部に設置し、そのビニールチューブを蛇口の先端に垂直につけた。そうすることにより、メッシュ前後での気泡の状況を観察する。同様に、シリコンの計測も行った。

空気柱発生の様子は次の通りであった。

     気泡を含まない水流がメッシュを通過するとき、メッシュの下面に突然細かな気泡が生ずる。

     メッシュ下面に付着した気泡自身が成長、あるいは互いに合体し、細い空気柱を形成する。

空気柱は金属管の時と同様に発生し、形状はより細く短いという独特なものであった。空気柱の最長の長さは金属管よりも短いが、金属管同様、伸びの早さや安定性は温度により変化した。とくに、シリコンチューブからは、金属管ともビニールチューブとも形状を異なる空気柱が観察された。シリコンチューブ使用時に生じる空気柱の形状は、細さ、メッシュ接触面の太さに関してはビニールチューブ使用時とほぼ等しい。しかし、空気柱の下方(メッシュから離れている方)にかけ、徐々に太さを増している。ちょうど、台形を錘にしてつるしたような形である。

 

管の材質が空気柱に及ぼす影響は主として空気柱の形状である(外形や最大の長さ)。空気柱の伸び方、および最長の長さが水温によって異なる傾向はどのような材質を用いようとも変わらない。

(解析[1] 温度依存)

 

先年実験した金属管を使用した場合の時間と伸びの関係のグラフは以下のとおりとなる。

 

 

ビニールチューブ、シリコンチューブを使用した実験の時間と伸びの関係のグラフは以下のとおりである。(グラフの縦軸「空気柱の長さ」と横軸の「経過時間」の最大値は金属管の場合と、下図のビニールチューブ、シリコンチューブでは異なる点に注意。)

 

 

この三種の材料を使用した空気柱の測定に関し、今までの実験により空気柱の特徴が如実に現れた「グラフの立ち上がりの角度=伸びの早速さ」、「最長の長さ」、「空気柱の変動の安定性」に着目し解析を行う。

 

@     伸びの早さ=speed of growth[mm/sec]

空気柱の発生直後から、極端な変化を見せる30秒前後までの長さの変化を速さとして求めたものを温度別に平均した。

空気柱の伸びの速さ(mm/sec)の水温との関係性は以下のようになる。

 

 

さらにこれをlogグラフに変換したものが以下のとおりになる。

logグラフで示すことによって、如実に傾向が確認できた。金属管、ビニールチューブ、シリコンチューブ(以下Me,Vi,Siを記載)を使用した際の空気柱の伸びの早さの水温依存様子が非常に似た傾向を示し、MeViSiの間に明確な差異は認められなかった。

 

ここで、空気柱の伸びの早さの水温依存について、「空気柱はキャビテーションによって発生する」という視点から解釈する。

水温が高くなればなるほど空気柱の伸びが速い原因は、気泡化する気体の量にあると考えられる。

液体の温度が高い事は、すなわち液体に内在するエネルギー値が高いという事である。気泡化には水流のエネルギーが必要である。液体に内在するエネルギーすなわち水流の内部エネルギーも高い高温は、同じ流速の低温とくらべるならば、気泡化は高温のほうが起こりやすい。よって、気泡化する気体の量の発生速度が増し、空気柱の元となる空気塊の増加によって空気柱の伸びは高温が早くなるのである。

                                                                                                              

 

A空気柱の伸びの安定性=Steadiness of air pole

安定性については、空気柱がある程度の長さからほとんど変化せずにいるか、きわめてゆっくりと安定して伸びている時間のうち、長い秒数を個々の変化データから選んで温度別に平均した。

空気柱の伸びの安定性と温度のグラフは以下のとおりである。

 

 

これをlogグラフに記すと以下のようになる。

 

@     と等しく、Me,Vi,Siの安定性の温度依存の傾向は類似していた。

水温が高くなればなるほど安定性が損なわれる理由は、内在エネルギーによって高温になればなるほど液体の運動が活発になり、空気柱の安定性を阻害するためである。

 

また、MeVi,Siの間には明らかな安定性の違いが確認できる。これはMeVi;Siの材質による摩擦の違い(すなわち、管側面付近の流速の違い→速度分布の違い→中央に向けた圧力の大小→空気柱の形状形成及び安定性)に原因があると思われる。

 

今回の実験に関してそれぞれの水温におけるレイノルズ数を計算した。(資料2参照)(Reを示す式において使用した流速については「実験5」を参照。)管内流なので、代表的な長さは管の直径16mmを利用した。動粘性係数は理科年表による。)

レイノルズ数がこの現象に寄与する可能性を考え、空気柱測定時の温度に対するReの違いを見てみると、温度TReの間にはTe^1/Reの関係を見出せる。

今実験の1/Re値と温度の関係性を示したグラフは以下のとおりになる。

一方で摩擦による損失は主として管の摩擦係数(レイノルズ数と管壁の粗さに関係)に左右される。今回は3×103 < Re < 1×105の範囲なので(約1033×103程度)管の摩擦係数λ=0.3164/Re^1/4 に近似するといわれている。管摩擦係数は概観として1/Reに比例する。

 

この曲線は空気柱の安定性のグラフと類似した傾向を示している。すなわち空気柱の安定性とレイノルズ数との間に関係性を見出せる。

 

管材質による摩擦の違いについては「実験3」で確認する。

 

 

B空気柱の最長の長さ=Maximum of air pole length

水温ごとの空気柱の最長の長さをプロットしたものが以下のグラフである。

 

 

明らかにMeVi,Siの間に空気柱の最長の長さの差異はあるが、低音が短く、中温が長く、高温が短いという山形の線が描けることは類似している。

この中温の長さのピークは「空気柱の伸びの早さ」と「空気柱の安定性」の交点部分に位置している。

また、材質ごとの最長の長さの原因はMeVi,Siのあいだに大きな差があることよりA安定性、つまり管の摩擦の違いにあると考えられる。

 

 

この空気柱の伸びと安定性の比のグラフは、伸びと安定性それぞれの最高値を10とし、そのほかの数値をそれを基準に比とすることで「Me,Vi,Si」及び「伸びの早さ」と「安定性」を同一グラフ上に表示した。(ただし伸びの速さのViSiについては材質の変化から60℃台の高温に信頼が置けないため、最大値として利用できない。そこで、金属の最大値である60℃台の測定値を10とした52℃の比の値3.6を利用、ViSiの信頼できる最大値である52℃の値を3.6として比を求めた。)

〔例〕Me 最高値621.04[mm/sec] 10.0 とおく 最低値300.13[mm/sec] 1.3 となる。1.040.1310.01.30

 

空気柱の伸びの早さと安定性が交差するあたりが最も空気柱が長く伸びる理由は、気泡化と安定性のバランスにある。気泡化は空気柱の伸びに欠かせない要因であり、同時に安定性がないと途中で空気柱が切れてしまうため長くは伸びない。

さて、ここまで空気柱の温度依存性を解析してきたが、以上のところでは最長の長さの差異など管材質による違いとみられるものは存在するものの、温度依存の傾向は非常に類似している。

よって、空気柱の発生という現象は、いかなる材質の管を使おうとも、空気柱発生の条件を満たし、かつ、ある程度の密閉性を保持した管ならば必ず発生、温度依存する現象であることが確認された。

 

(解析[2] メッシュと空気柱発生の関係)

キャビテーションという観点からメッシュによる空気柱発生の有無に対する解析を行う。

メッシュを変えて実験した2006の実験の結果は、1mm以下の網目のメッシュにより空気柱は発生し、また1mm以上の大きさ網目のメッシュであっても2枚、3枚重ねることによって網目が1mm以下になることで発生した。また、1mm以下の穴であったとしても、気泡とほぼ同じ大きさの丸い穴を点在させる重ね方の使用時に空気柱は発生しなかった。これを「特殊な重ね方」と呼んだ。

1mmを境に空気柱の発生の可否が決定する理由は、気泡の発生のメカニズムの部分ではなく、発生後の気泡がメッシュに付着するプロセスにあると考えられる。

気泡がメッシュに付着するとき、いうまでもなくメッシュの網の部分に付着する。

観察によりメッシュの下面にはじめ突然発生する気泡の大きさは1mm程度ということはわかっているので、3mm以上の太さの空気柱になるためには網目上で合体しなければならないわけである。その空気柱になるまえの空気塊は支えられるものがなければ水流によって流され、千切れてしまう。

その空気塊を支えているのが網上の表面張力であろう。

そうであると仮定すると、網目が大きくなればなるほど空気塊と接触する網部分の割合は減少し、表面張力で大きな体積の空気塊を支えられなくなる。

その仮定をもとに、まず網目の大きさごとに伸びるであろう空気柱の長さを予想する。

予想を一般式で表す。

@ メッシュに付着する空気柱の直径をnとおく。これは網目に付着していると考えるとき、占有する網目の正方形の一辺の長さ=メッシュの空白一辺が1mmなので、網目の個数にあたる。たとえば空気柱の太さが2mmならば、占有する正方形の一辺は、メッシュの一つの穴1mmの二つ分に当たる2mmなので、穴二つ分にまたがって存在している。)

A     直径nの空気柱が実質的に閉める断面積は、メッシュの穴の個数に対応し、正方形を作る複数のメッシュ穴の個数はn×nとみなせる。しかし、実際に空気柱がメッシュに接触しているのは四辺の部分なので接触面積は3で求まる。

B     たとえば、空気柱が直径2mmの太さに見えるとき、メッシュの穴(正方形の空白部分)2×24個分を占有しているはずである。そして接触している辺の数は12本ある。空気柱と網が接する部分の長さ(正方形の辺の合計)2{(n+1)×n}を求める

C     Bの最小を1とおき0.5{(n+1)×n}で比を求める

D     Cで1とした最小の単位をxとし、Cの比に基づき空気柱の最長の長さを0.5x{(n691)×n}[mm]で予想する。

 

その後、実際に測定したメッシュの網目の大きさごとの空気柱の最長の長さと予想を照らし合わせた。

 

The circle of air pole in diameter = One side of a square mesh     [mm]

The number of square meshes =  The circle of air pole

The square measure of contact surface = The number of square's sides

Ratio of the number of square's sides

Presumptive maximum length of air pole

Linear measure of maximum air pole [mm]

1

1

4

1

x   =  2[mm]

2

2

4

12

3

3x  =  6[mm]

7

3

9

24

6

6x  = 12[mm]

13

4

16

40

10

10x = 20[mm]

24

5

25

60

15

15x = 30[mm]

35

6

36

84

21

21x = 42[mm]

 

7

49

112

28

28x = 56[mm]

 

8

64

144

36

36x = 72[mm]

71

・・・

・・・

・・・

・・・

・・・

 

N

n×n

2{(n+1)×n}

0.5{(n+1)×n}

0.5x{(n+1)×n}

 

 

 

ほぼ対応していることから、予想通り空気柱はメッシュとの表面張力で保たれていることが確認できた。

 

(まとめ 1)

空気柱は温度およびメッシュの形状により伸び方が異なり、管材質が異なってもその傾向はかわらないことが確認された。同時に、管材質により最長の伸びや安定性に違いが出ることも確認された。

また、温度やメッシュの形状により空気柱の伸びが変化する理由を、以下簡潔にまとめる

温度: 

@ 液体の内在エネルギーの違いによる気泡化の速度の違い=伸びの早さ

A     内在エネルギーの違いによる液体中の分子の活発さ=安定性

B     @Aのバランスのよい中温=最長の長さ

C     温度による粘性の違いに起因するレイノルズ数の変化(レイノルズ数が多いほど水流は乱れる)=安定性

メッシュの形状:

@       空気塊とのメッシュの接触により表面張力で空気塊を支える=穴が大きすぎると表面張力の不足で空気柱が発生しない

A       「特殊な形」とは穴が大きな部分が点在するある特定の形のため、空気塊が発生する空間のある穴の部分で、気泡の付着までは起きうるが、穴の縁だけでは接触面積不足でそれ以上の長さの空気柱を支えることができない。そのために、空気柱が成長することができない。

(ここまでの理論の検証実験とその結果)

1. 空気柱の形状の違いの理由究明のため、管と水との接触面の摩擦を定性的に測定した。

測定に使ったものと同一の金属管、シリコンチューブ、ビニールチューブと同じ材質の平面を作り一定の角度に保ち、同時に溶けかけた氷を滑らせる。

ここで溶けかけた氷を用いる理由は、実験の際問題となってくるのが管表面と水の間の摩擦であるためだ。(細い水流、水滴なども観察して定性的に印象をとらえたが、落下のスピードを目視するのにサイズのそろえやすい氷は便利であった。)

また、金属管に関しては放熱が激しく、ビニール、シリコンと比較して氷がより早く解けてしまうため、保温用発泡剤を巻き過度の放熱を防いだ。

結果は、氷が落ちる速度は金属管が一番遅く、次にビニール≧シリコンの順であった。特に、金属管、ビニールにおいては滑り始めまでの時間(=最大静止摩擦力)が長かった。

つまり、摩擦は金属管が一番大きく、次にビニール≧シリコンと考えられる。

管表面付近は摩擦により水流速度が遅くなり、それによって中央付近との流速差が生じていると考えられる。流速差が大きければ大きいほど、ベルヌーイの定理により流速が遅く圧力の高い管壁から、流速が早く圧力が低くなる中心へ向かう力は大きくなる。金属管の場合、中心へ向けて大きく力がかかることで、空気塊が大きく合体しやすく、最大の長さが長くなる。さらに円柱状、または先端が細くなった形状で現れていると考えられる。

一方で、ビニールやシリコンは金属管よりも管壁よりも管壁と中央部の流速差が小さい。そのため、合体を促す力も小さく、短い柱で終始すると考えられる。さらに、シリコンを使用した際に形成される空気柱の形状が下方部分の広がったものになっている理由は摩擦による流速差の減少からもたらされる中心への圧力の縮小に在ると考えられる。

 

2. 以上の考察の仮説を確認するために、アクリル管に対しても実験3と等しく定性的な摩擦の観察を行った。

その結果、厳密に言えば、摩擦の大きさとして 金属 > アクリル > ビニール 程度であるようにも見られたが、金属管よりは、ビニール管に近い速度で凍りは落下した。

前述1.の考察で述べている事は、摩擦の違いにより、各管の中心部分と接触部分の流速差に違いが生じ、それから考えうる圧力の違いが空気柱の形状を左右しているというものである。

その仮説にのっとるのならば、ビニールとほぼ同等の摩擦であるアクリル管を使用した空気柱の形状は、ビニール管を使用したときに形成される空気柱と等しい、もしくは酷似した物であるはずだ。

 

3. アクリル管を使用した空気柱観察実験をここまでの他の管と同様に行った。

その結果、ビニール管と酷似した形状の空気柱が観測できた。

ただし、メッシュ部分でビニール管よりも太く空気塊が合体し、空気柱は長くまで成長した。解析1のすべてのグラフ内にほぼ予想の位置であてはまる実験結果が得られた。

空気柱の形状が異なる主な理由は、水流中の圧力分布の違いであろう。

摩擦が大きくなればなるほど、管壁近くの流速は遅くなり中央部分との流速差が拡大する。流速差が大きいほど外側から中心へ大きな圧力が向く。中心への圧力により、空気柱は柱の形をとる。

 

 

しかし、摩擦の小さいシリコンでは、外側からの圧力が足りず、下方が円錐のように広がってしまうのである。同様にして、ビニールも多少の広がりが見られ、アクリルも同様である。

また、「解析1」で述べた安定性に関してだが、解析11/Re値と安定性は関係性を見せた。先ほども述べたとおり、1/Re値は管摩擦係数に関係する。管材質により摩擦が変われば、当然安定性にも影響するわけである。

 

(気泡化の条件について)

空気柱という現象がメッシュとの衝撃による気泡化が原因と分かった。

メッシュとの衝撃が弱ければ気泡化は起こりにくい、または起こらないと考えられる。そこで、流速の異なる水道の蛇口を用いて空気柱の発生の有無を確かめた。

その結果、流速が遅いと気泡は発生せず、空気柱は発生しにくく、流速が早いほど発生しやすい。

18℃以上では流速が約1m/secが空気柱発生の可否のラインである。

また、水温が低いほど空気柱は発生しにくく、40度以上ではおよそ0.8m/secでも十分に発生する。

 

流速によって空気柱の発生の可否が分かれるということは、仮定どおりメッシュとの衝撃は液体中の気体の気泡化に欠かせないものであることを示している。気泡化に必要なエネルギーとして温度による内部エネルギー以外に、水流の運動エネルギーも重要な役割となっている。また、この二つのエネルギーの和がある程度の一定値を越せば、メッシュとの衝突により水流中に1mm程度の気泡化(空気の素)がおきることが推測される。

 

(管の向きと空気柱の発生についての実験と結果)

2006では。空気柱が延びる要因として、上方への保つ力として「浮力・表面張力」を、下方への伸ばす力として「水流の力」などの要因を上げた。

また、管の向きと空気柱の発生については以下のように推測した。

<管を水平にした場合>

空気柱を保つ力は表面張力が主となり、伸ばす力は水流が主となる。ただし、浮力と水流の力の合力が斜め上方に向かうため、表面張力のみでは支えきれず、空気柱は斜め上へと千切れる。

<管を上方へ向けた場合>

空気柱を保つ力は表面張力が主となり、伸ばす力は水流・及び同方向の浮力となる。しかし、上方向への力が強いため表面張力だけでは支えきれず、空気柱は上方向へと千切れる。

 

2007ではこの確認として、観察のしやすい長いビニールチューブを金属管の先端に取り付け、水平、及び上方を向け、空気柱の様子を観察した。

<管を水平にした場合>

予想通り斜め上方向へと千切れて流れた。

また、空気柱は太さ12oの太さで、2,3o程度まで伸びた後、千切れた。

<管を上方に>

予想通り上方へと千切れて流れた。

また、空気柱は太さ1,2oの太さで、1,2oまで伸びた後、千切れた。

また、チューブを液体中にすべてつけてしまって、その中で水流を流しても同様であった。

空気柱が千切れずに1,2oまで成長する理由は、表面張力の支える力と、流速の伸ばす力(水平方向に向けた場合)が浮力よりも勝っているため、空気柱をメッシュから切り離す力が足りないためである。

すなわち、メッシュ部分に生じる表面張力が支えうる浮力は空気柱12π×3(o3)周辺が限界と考えられる。

先年、予想した宇宙空間での空気柱の発生について、「宇宙空間に浮力は存在しないためどのような向きの管であっても空気柱が発生する可能性があり、地上よりも多くの場面で空気柱は発生するであろう」と主張した。地面に対して垂直に下方を向いた水流以外の条件で、空気柱が千切れる原因が浮力にある事が確定付けられたことで、その推測の信憑性も増した。

 

 

(結論)

今回までの研究を通して、空気柱の発生という現象が、「メッシュに起因するキャビテーション」であることが判明した。

空気柱発生は以下の条件を満たした場合に起こる。

@       気体を含んだ液体がある

A       液体の温度が約16度以上(16度ではほとんど発生しなかった事より推定)で

B       それが密閉された管内を流れている

C       その流れが下方を向き(水平方向や上方向でも空気柱は一瞬発生するが一般的ではないとして、ここでは下方とする)

D       1mm以下(ただし特殊な重ね方を除く)の網目のメッシュに

E       およそ1m/sec18度以上の場合)で衝突する

 

また、空気柱の伸び方は水温、メッシュの形状、管材質に依存する。

水温依存の原因は、温度による液体の内在エネルギーの変化による「気泡化や、分子の活発性」及び、粘性の変化による「レイノルズ数値に示される安定性の変動」である。

メッシュの形状に依存する理由は、空気塊をメッシュ下に保つための表面張力にある。

管材質によって温度依存、メッシュ形状依存の傾向は代わることはないが、摩擦による流速変化に起因する形状の変化や安定度の変化は見受けられる。

 

空気柱の発生する条件を満たした管を地面に水平にした場合は浮力と水流の合力により空気柱が斜め上にちぎれ、上方を向けた場合は浮力と水流の力で上方へ向けてちぎれた。

これにより、ますます浮力のない宇宙空間において空気柱の発生の可能性が高くなった。

 

また、今年の実験で液体内にすでに気泡化した泡が含まれていなくとも、気体が含まれているならば流速1m/sec下においてメッシュ存在部分に空気柱が発生する可能性が非常に高いことが確認された。これは、さまざまな場面で起こりえる問題ではなかろうか。

たとえば、実験装置の内部、燃料配管、もしくは体内における血管やその他体液の通過する管内に入れるステント(網目状のものがある)など。流速、気体を含有した流体、密閉間、障害物などという条件さえ満たしてしまえば、空気塊が発生する条件がそろっているところは珍しくないのではないだろうか。

空気柱発生がお風呂場の蛇口などであるからいいのであって、たとえば膵液などが流れる管内に填めたメッシュ付近で起こったとしたら一過性の小さいものでもそれは無視できない大問題となって浮上する可能性がある。メッシュという形状が空気塊を表面張力で支ええるものであることを認識し、キャビテーションの危険性に目を光らせる必要があるだろう。

 

しかし、たとえば不幸にして不透明な管や、血管内部など、不可視の部分で空気柱が発生してしまったらどうであろう。私たちは気づくことはできない。

そこで、私は音による空気柱の発見を提示したい。『気泡には音がある』との記述もあり、先年測定しただけでも空気柱発生時とそれ以外のときでは音に違いが生じた。

しかし、その違いは大きくは水流の乱れによる床などの接触面との騒音が主を締めてしまい、気泡自体の音はその中に埋没した形となった。

しかし、参考として以下に貼り付けるデータのように、明らかなこの違いのどこかには空気柱自身の音も存在していよう。

音こそが空気柱の存在を不可視な領域において知らしめてくれるものである。今回の研究で、空気柱はビニールチューブの中の好きな位置にメッシュを填めて作れることがわかったので、接触面との音をビニールチューブの先端を水中に入れて外部に放出させないなどして最小限に抑えることを考えている。マイクをビニールチューブに直接接触させ録音するなどの手法を考案している。ある程度のデータは収集したが、まだ模索中である。今後は、メッシュによる空気柱発生時に起きる気泡自身の音を解明することを目標に実験を進めたい。

 

 

参考文献

1.「物理のコンセプト 力と運動」 1993.6.20

 ポール・G・ヒューエット著  共立出版株式会社

2.「パソコンで見る流れの科学」 2001.7.20

矢川元基著 BLUE BACKS

3.京藤敏達 前田直輝 桜井力

「水中の気泡が発する音」 ながれ232004

4.Warjito 望月修 石川仁

「単気泡の分裂とそれによる音」 ながれ212002

5.ハンフリー・マリス セバスチャン・バリバー

「液体ヘリウムにおける負の圧力と気泡発生」 パリティVol16 No.06 2001-06

6.http://web.kyoto-inet.or.jp/people/macchann/hiroshi/venepump2.html