t
ふしぎしんぶん
だい118ごう はずむ ぼーる の ふしぎ

弾むとは?

以前の『子どもが見つけた不思議』で、絨毯でボールがよくは弾まないのはなぜ?という質問を取り上げたことがありました。たしかに、よく跳ねる材質のスーパーボールでさえ絨毯に落とすとほとんど跳ねません。
反発係数という数字があります。跳ね返りの度合いを示す係数で、床から離れていく早さが近付く早さの何割かを示します。
これが1なら完全弾性衝突。落ちたスピードでそのまま跳ね上がります。
衝突の瞬間、ボールや床は互いに圧縮しあって歪み、そこにいったんエネルギーを蓄えますが、歪みの回復とともに、ボールが跳ね返る運動エネルギーに変化していきます。百%エネルギーが保存されると、始めの速さで持っていたエネルギーが、跳ね返ったあともそのまま保たれるので、落ちたスピードそのままの跳ね返りがおこるわけです。
ただし普通は、エネルギーの一部が、圧縮や接触による摩擦の熱となり、また、音となって拡散してしまうため、完全な弾性衝突にはなりません。跳ね返るスピードは、ぶつかったときよりも遅くなるので、勢いが落ちたように感じます。また、その結果、手を離した高さまで、跳ね上がってきてくれません。ちなみに野球ボールを大理石の床に落とすと反発係数はおよそ0.6。

反発係数が0だとまったく跳ね返らず、ボールのエネルギーがすべて熱や音に変わるか、球や床の歪みがそのままになるかなど、どこかに吸収されて、なくなってしまうように感じられます。弾まないゴム球の場合、主として熱になってしまうのですが、このような素材は、衝撃吸収剤や、振動防止剤として活躍します。
絨毯のように床の面が柔らかいと、圧縮で変形した柔らかな面が十分に回復しないので、ボールは絨毯に気持ちよく抱っこされてしまって、手許にはまったく戻って来てくれなくなるのですね。

 



瞬間に歪む

ボールが床にぶつかった瞬間、ぶつかった面は
平らになり、大きく形が歪みます。丸が大福餅になる感じでしょうか。
野球の硬球は手で握ってみると大変堅いですが、打席で打たれる瞬間のボールの形はバットの形に添って大きく歪んでいます。
がちがちのゴルフボールですら、クラブで打たれる瞬間には、やはり大きく歪みます。
この『歪み』が元に戻ろうとする力が『弾み』を生み出します。
ボールを歪ませる床、バット、クラブなどは、充分に堅いことも重要です。そうでないと歪んでくれないですから。

 


もう一つ重要なのは、生じたゆがみが、いかにはやく元に戻ろうとするか。ゆっくりもどるのでは弾みません。つまり、赤ちゃんのほっぺを指で押すと、ぷにぷに反発して次の瞬間には元に戻りますが、大人の足のむくみはへこんだらゆーーーっくりとしか元に戻りませんね。
前者をスーパーボール、
後者を空気の抜けかかった
ボールとお考えください。

 

 



今月の話題より・・・
ちょっと変わった絵本の楽しみ方

「ちいさいみちこちゃん」(福音館)こどもたちがボールであそんでいるところに、みちこちゃんがやってきます。みちこちゃんはみんなと遊びたいようです。「ラチとライオン」(同)ラチは一番の弱虫。でも、赤い小さなライオンがやってきてから、どんどん強くなっていきました。最後にはいじわるなのっぽから、友達のボールを取り返せるほどに!「ルルねこちゃん」(偕成社)ルルは、みんな悪いことはルル猫ちゃんのせいにしていました。でもある日、ボール遊びをしていたら、目の前に車が来て危機一髪。「ころころぽーん」(福音館)ボールが動物たちや植物たちの中をはねていく様子を描いた絵本。どんぐりが投げたボールは、めぐりめぐって最後はどんぐりのところにころころぽーん!「こぐまちゃんとぼーる」(こぐま社)こぐまちゃんはボールが大好き。でも、遊んでいるうちにボールがなくなってしまって、あわてて探して・・そうしたら、新聞屋さんがボールを届けてくれてああ、よかった。


「すてきなボール」(ひかりのくに)犬のボブは誰かと遊びたくなって散歩をしていました。すると、すてきなボールがあるじゃないですか。そのボールの持ち主の犬と、一緒に遊ぼうと思ったのに、その犬はボブがボールを捕ってしまうと思って怒りだしてしまいます・・・。「ころころいけはぽちゃんいけ」(福音館)ひでくんとななちゃんがボールを探していたら、きれいなビー玉を見つけました。でも、取り合っているうちに、ビー玉はぽんぽんと跳ねながら、池に落ちていってしまいます。他にも、「いちにち」(Parco出版社)「ベスとベラ」(福音館)「とんことり」(同)「みかんのおへそ」(福武書店)など。