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ふしぎしんぶん
だい112ごう  くっつく ふしぎ

くっつくもの、くっつかないもの

はるちゃんは画用紙に折り紙を貼り付けていました。あげくに、折り紙はスモックにまでくっついてしまいました。
糊の作り方の記述にあるように、どろどろしたところがしみこみ、紙や衣類の繊維とからみ、それごと固まることができる場合に、糊は「ものを貼り付ける」ことができます。
糊の「どろどろ」はデンプンです。
古くから米(うるち米)が主食だった日本では、世界の他の国と違って、この米糊が糊の代表でした。平安時代の「延喜式」(905年)という本の中で、いろいろな道具を作るときの材料の一つとして、「糊料」という言葉が初めて出てきます。中国ではもち米を使った糊が作られています。タピオカを作るのに使われるキャッサバの根、サゴヤシの幹、蘭の根など、地域により利用しやすいデンプンで糊が作られてきました。
デンプンは「澱粉」と書き、「沈殿した粉末」の意味です。英語ではスターチといいます。緑色植物は、光合成により太陽の光のエネルギーを化学エネルギーに変え、澱粉という形で種子や実、根、茎などに蓄えます。特に、穀類や芋類には多量に蓄えられています。澱粉は炭素、水素、酸素の三種類の元素から造られる巨大な分子で、ブドウ糖の分子から水の部分が取れた物が、二百から千個ほども鎖状に繋がっているのです。
米や小麦粉のデンプンを拡大してみると、デンプンの粒同士がしっかり結びついているのがわかります。ところが、煮るとこの粒がほぐされて水に溶けてべたべたになるのです。


 

紙と紙の間にべたべたの糊を塗ると、があこ教授の説明のように、水に溶けたでんぷんの粒は紙の隙間に入り込んでいきます。そして時間がたつにつれ、だんだん水分が蒸発して、始めのようにでんぷんの粒と粒がしっかりくっつくのです。そのときに、紙の隙間に入り込んでいる粒も、互いにくっつくので、紙ごと一体化してしまいます。
ところで、デンプンというとジャガイモにも含まれていると、小学校の授業などでならいます。でも、ジャガイモ糊とはいいません。「くっつく」デンプンと「くっつきにくい」デンプンがあるのです。
小麦粉のデンプンとジャガイモのデンプンを拡大して比べてみると、粒の大きさが違います。糊になるデンプンは粒が小さいので、隙間に入りやすく、しっかりくっつけるのに適しています。ジャガイモなどのデンプンは、粒が大きいので、すき間に入りこみにくく、くっつきが弱くなります。
何が糊で貼れるかは、糊がどのようにくっつくかを考えると、ある程度想像がつきます。貼り付けたいもの同士のどちらにも、溶けたデンプンがしみこみ、すき間に入り込んでからみつき、そのままかたまる必要があります。ですから、デンプンのしみこむ余地のないガラスや、プラスチックには、ふつうの糊では、たとえ紙でも貼り付けることができません。



いろいろな糊

世界の広い地域で使われてきたデンプン糊に、小麦のりがあります。小麦を水に解いて煮て練り上げた糊です。古代エジプトなどの時代から、小麦や、大麦は給料として支給されていたくらいですから、接着材料としても使われていただろうと推定されています。
また、小麦粉を袋に入れて水にもみだし、澱粉質のみを取り出す正麩と呼ばれる糊もあります。障子貼りや、織物の糊付けに使われます。何年か正麩を腐らせて作る「腐れ糊」は、水分が少ないので黴びず、綺麗に貼れて、表具屋さんが書画の表装の際に使います。
デンプンではなく、天然にある接着性のあるものに、ゴム糊があります。天然ゴムが広く利用されたのはコロンブスの時代の後です。アマゾン流域での現地人が自然林のゴムの木に傷を付け、白い液を採集、自然凝固させてゴムと作っていました。これが、ヨーロッパで関心を集めたのです。このゴムが、接着剤として使われだすのは、ずっと後で、溶剤により溶かすことが出来るようになってからです。現在でも自転車のパンク修理用として利用されています。

 


アラビア糊は切手の裏糊として有名で、身近なためデンプンのような印象がありますが違います。アラビアゴムノキの分泌物から作り、空気に触れると固まる性質があります。アラビアゴムノ樹液は、糊としてだけではなく、古代エジプトでパピルスに字を書く際のインクの滲み止めに使用したほか、中世以降、やはり紙を使用する際の滲み止めにインクに混ぜられたり、水性絵具にも用いられました。
  日本における、おもしろいものとして、鳥もちがあります。ヤマグルマやモチノキなどの樹皮から取った粘つくどろりとした物質です。モチノキは宮城、山形以南の山間部に、ヤマグルマは沖縄などの南の地域に、分布しています。モチノキの樹皮を水につけて腐らせ、搗くとゴム状の餅になります。鳥をつかまえるためや、包帯液、絆創膏の添加物などに使われました。
これらは植物由来の糊ですが、他にも動物由来の糊など、人間は様々なものを接着に利用してきました。

 



今月の話題より・・・
ちょっと変わった絵本の楽しみ方

くっつくは、とても身近なテーマ。「くっつくふしぎ」(福音館)糊を始めとして、昔のくっつく、今のくっつくをいろいろ紹介しています。虫から糊が!?魚から糊が!?などなど、なかには意外なものもあります。「ぐりとぐらのうたうた12つき」(同)7月には、おりがみをきって七夕の準備。のりは欠かせません。「わたしようちえんにいくの」(文化出版局)ちいさいアンナは幼稚園に行くのがちょっと不安。でも、いざ行ってみたら、切り紙におままごと、楽しい連続で、お友達までできました。「わたしのおうち」(あかね書房)女の子は段ボールの箱で、おうちを作ろうとします。はさみに糊にテープ・・でも、弟が邪魔をするの。

「ぐりとぐらのしりおりうた」(福音館)一年間を描いた、しりとりうた。7月はやっぱり切り紙張り紙をして、七夕の準備です。「あいうえおみせ」(同)あいうえお順にいろいろなお店を描いている絵本。糊はどのお店でうっているかな?「つくってあそぼうかみのちょうこく」(同)かみで帽子をつくったり、富士山をつくったり・・見ていると工作がしたくなる一冊。はさみとのりは不可欠です!さて、他にも「はるかぜのホネホネさん」(同)「ひみつのひきだしあけた?」(PHP研究所)「さっちゃんなっちゃん」(教育画劇)「ねこどけい」(福音館)「とんことり」(同)これらのお話にはたくさん「くっついているもの」がでてきます。これはどんなものでくっついているのかな?のりかな?電気かな?ねじかな?それとも、磁石かな?などなど、クイズのように考えながら読んでみてください。