ふしぎしんぶん
だい79ごう たかくはねられる ふしぎ

作用反作用の法則

宇宙飛行士毛利衛さんを覚えておられますか。スペースシャトルでの映像で、同僚のマイク飛行士と試している実験があります。
二人とも向かい合ってぷかぷか浮かんでいて毛利さんがマイクさんを押すのです。二人はそれぞれ反対方向に飛んでいって壁にぶつかり跳ね返ります。勢い余ってくるりと身体が回ったり・・・。
これはまさに「作用反作用」を確かめた実験と言われています。ニュートンの第三法則「作用反作用の法則」は、言葉ではよく耳にしますが、どのくらい私達の日常に活躍しているのかは、あまり意識していない場合が多いように思います。
これは二つの物体が接触した「すべて」にかかわりのある法則です。こうして原稿を打っている私の指とキーボード。開いている本と机。背中と椅子の背もたれ。足と床。そのすべてにおいて、作用反作用の法則が成り立っています。
毛利さんとマイクさんのように反対方向に飛んで行かないのは、日常では摩擦があったり固定されていたりして必ずしも二つの物体が同時に動くわけではないからです。
例えばスケートを履いてリンクの上で手で壁を押せば(作用)、あなたは壁から押し返される力を受けます(反作用)。あなたはすーっと壁から離れていくことでしょう。壁は固定されているのであなたが押したことで動き出しはしません。でも力は受けています。

もしも壁でなくて、スポンジだったら、力を受けたことがはっきりわかるように、窪むことでしょう。
相手が壁でもスポンジでも、あなたが押すことによって、あなたは必ず押し返されます。向きが反対で大きさが等しい力を受ける、この関係を作用反作用の法則と呼んでいるのです。
ポイントは「向きが反対」と「大きさが等しい」にあります。
バレエで高く飛びたかったら、飛びたい方向と正反対の向きに床を蹴らなければなりません。そして、強く蹴ればそれだけ、強い反作用を受けることができます。
かけっこのスタートダッシュ、跳び箱の飛翔、バレーボールのレシーブ・・すべて同じように考えてみると、どうしたら効果的に力を受け取れるかがわかります。ただし、あくまでも理屈上は・・・ですが。実行するには理屈に乗っ取った動きができる身体の訓練が必要ですね。



本の中にも

床を押すと言う話題を書きましたが、見落とされやすいのが何かを発射した時の反作用です。近い感じとして、自転車の後部座席にのっていてひょいと後ろに飛び下りたかったら、運転者の背中を押して反作用を受けなければなりません。ロケットの噴射、射撃など二つの物体が分かれていくのも、お互いが押し返す作用反作用があるからで私達は片方を反動などと呼びます。
物語や小説の中には作用反作用をよく見かけます。ハードボイルドの銃の描写、時代小説の剣の動き、触れあうグラスの動き、ピアノのタッチ・・・。怪談風ミステリー作家京極夏彦氏は小説「宴の支度」の中で作用反作用に直接言及しています。
師範代の気に弾き飛ばされる弟子の様子を、懐疑的に観察する女性の考えを描写している場面です。


以下、一部を引用してみましょう。
『気が当たったのだーと師範代は説明する。それはいいだろう。気とは未知の波動なのだそうだが、なんであれ、取り敢えず弟子を飛ばすだけの力が師範代の掌から発射されたのだー中略ーそうすると、作用反作用の法則に従うなら、放出した側にも同じ大きさの力が働いていなくてはならないことになる。つまり、力を発射した反動が師範代の腕なり腰なりに作用していなければ嘘である。もし道場の床が氷で、師範代がスケート靴でも履いていたなら、気を発した師範代は気を発射した瞬間に弟子の飛ぶのと反対方向に後退するはずである。』
まさに、作用反作用の説明ですね。理科の教科書の代わりになります。

 


今月の話題より・・・
ちょっと変わった絵本の楽しみ方

作用反作用の法則といわれると難しい気がします。でも・・・
「パンちゃんのおさんぽ」(ブックローン出版)パンちゃんがでんぐりがえしでたのしくお散歩。このでんぐり返しも地面と手の間の作用反作用のおかげで出来るのです。「ぶつかる!ぶつかる!」(福音館)いのっぺちゃんがはじめて自転車にのるお話。ブレーキをかけること、赤信号では止まることなどなど、出会う人からおそわって一人前に自転車を乗れるようになりました。自転車が進むのは地面とタイヤの作用反作用。これがないと自転車にも乗れません。「いたいのいたいのとんでけ」(同)こいぬくんは「いたいのとんでけ」と飛ばしてもらった「いたいの」を探してうろうろ。探しているうちに、こぎつねくんとぶつかって二人はしりもちをつきました。あいたた・・。あ、それ!作用反作用ですよ。ぶつかられたこぎつねくんの頭に作用がはたらいて、こいぬくんの頭に反作用が働いています。さて、場所も少なくなってまいりました。

ここか らはさらっと作用反作用 に焦点を当ててご紹介い たします。
「ボールガエル」(同)ボールの中にカエルがいるというユニークな発想。「ぷちぷち」(アリス館)かわいいイラストと擬態語の絵本。「なつみかんのおへそ」(福武書店)大男がおへそを欲しがるお話。おへそになったなつみかんは嫌がってころこぴょんぴょん逃げてゆきます。これらのようにものが弾むのも作用反作用です.「だるまちゃんとかみなりちゃん」落ちてきたかみなりちゃんのお話。だるまちゃんが飛び跳ねる場面があります。バレエのジャンプと同じく飛び跳ねるときは地面と足の作用反作用を利用しています。「うさぎのくれたバレエシューズ」(小峰書店)「アンジェリーナの初舞台」(大日本絵画)「ぼくとおどりませんか」(ほるぷ出版)これらは皆バレエや踊りのお話。どれも印象的で素敵なお話です。今回のふしぎしんぶんのテーマのバレエに関わる作用反作用を思い出しながら読むと、いつもと違った面白さがありますよ。