はかり
物にはみな質量があり、これに地球の重力が働くことによって、持ち上げる時、投げる時、「重さ」を感じます。自分が動く時も体重を感じる時があります。
重さは小学校の教科書では5年生の理科で扱うことになりました。
算数ではグラムやキログラムなどの重さの単位を中心に学習しますが、理科では手応えから知る重さ(これは主観的なもの。他人と一致するとは限らない)から、どのような道具を使えば測れるか(てんびんやいろいろのはかりを使って、客観的な単位で重さをはかる)を実験を通して学習します。
わりと、「なあんだ・・・。」という程度の扱い。大人には簡単そうですが、これが案外子供達にはくせもののようですね。
今の大人の人は、中学で質量と重量について、いろいろと学習しましたが、今は中学でも大変軽い扱いになっています。あまり踏み込んで書くと、検定で文句がつきます。
・・と、よけいな話はさておいて、しばらく面倒な話です。ごめんなさい。
「重さ」は地球上だからはかれます。
私を地球の重力が引っ張っているから、浮かばずに地面を歩けるし、体重計の台にも乗れて、知りたくもない体重がはかれるのです。
宇宙空間の無重量状態では乗っても台を押せないのだから、普通の体重計で体重ははかれません。
でも、私が私である以上、なにかがあるはず。本当の私をつくっている物質の総量、それを質量と呼びます。(ちなみに重い物は動きにくいので、宇宙船では「動かしやすさ」が体重の指標になります)
地球上では重力の力で、どんなものもほぼ地球の中心に向かって引っ張られています。
1kgの物体に働く重力の強さ、「重さ」は1kgw(キログラム重) です。
最近はN(ニュートン) という力の単位も用います。1kgwは約9.8Nです。
質量1kgの物体に地球の重力が働くと、毎秒約9.8m/sで加速されていきます。これを重力加速度と呼びます。
重力の強さは質量×重力加速度と考えられます。例えば(1kgw=9.8N)=(9.8m/s2)×(1kg)
台ばかりも、引っかけ型のバネばかりも、天秤も、すべて、1kgwのものを測ると1kgとはかれます。目盛りや釣合う重りの表示がそうなっているという意味です。
このため、月でバネ式の秤を使うと、重力が1/6なので引っ張る力も1/6になり、「重さ」も1/6ではかれてしまいます。
天秤は左右の釣り合いなので、1kgwにつりあう重りが1kgになっていますから、重力が1/6になっても、測りたい物も重りもどちらも1/6になります。そのまま釣合って、1kgとはかれます。
面倒臭い話に、おつき合い下さり、ありがとうございます。
本題に入ります。重力は世界中どこでも同じだと思われがちですが、実は緯度によってほんの少し違います。
地球は軸を中心に自転しているので、その遠心力の大きさが緯度によって異なり、そのせいで重力も少し違います。遠心力の小さい南極と北極がいちばん重く、回転軸からもっとも遠い、遠心力の大きな赤道で軽くなります。
日本列島においても地域によって重カ加速度の値が違います。
たとえば稚内は9.806に対して、東京は9.798、新潟9.800、那覇は9.791。昭和基地の9.825やシンガポールの9.787。
これはどういうことになるかというと、各地域の実測重力で単純計算をすると同じ質量1kg分の肉が違う数値を示します。稚内9.806N、那覇9.791N。
もし、稚内でつくり、稚内で測ると、質量1kg分の肉が1kgと表示される秤があったとします。この1kgは実際は9.806Nに対応しています。
これをこのまま那覇に持っていったら、那覇では1kg分の肉には9.791Nの重力しかかかりません。重力が弱い。ということは、秤は1kgを示さず、0.998kgを示すでしょう。
2g損します。これが100g200円程度の肉ならまだ諦めもしますが、g何千円という貴金属だったりしたら、ちょっとヒンシュクものです。このため、「計量法」があります。法律です。罰則も含めて、全部で百八十条の条文があります。
これにより、今までは、日本全国を16の使用区域に分けて、それぞれの区域ごとにはかりを調節していました。正確なデジタル式や目盛式のはかりを見てみると使用区分が表示されているものがあります。
ここのところで、国際基準と整合をとるため、計量法が改正され、緯度を基準にしていた使用区分が、新法では使用可能な重力加速度により区分されることになるそうです。
いずれにしても、気軽に使う秤ですが、基準を曖昧にすると戦争にまでつながりかねない商取り引きの基本、むずかしいですね。
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