台所の科学

パスタの茹で汁で油汚れが落ちる

これは次のような読者からのご質問にお答えしたものです。


いつも家族揃って楽しく拝見させていただいております。台所の科学への質問です。パスタを茹でたときの茹で汁が 油汚れをすっきりと落とすことは広く知られていますが、いつも あまりの汚れ落ちに不思議に思っておりました。どういった作用で油を分解しているのでしょうか。自分で調べずに申し訳ありませんが、ご存じでしたら(あるいはあたりまえのことだったりして・・・)ご教授くださいませ。よろしくお願いします。


お米のとぎ汁や、パスタの茹で汁には、サポニンという物質がふくまれています。サポニンは、シャボンと同じ語源をもち、昔から天然の界面活性剤として知られてきました。
石鹸などの界面活性剤は、長い分子の一端の親油基が油を浮かび上がらせ、もう一端の親水基が浮かび上がった油を水のなかに取り込みます。それで、油汚れが落ちるわけです。 サポニンは、植物性の多くのものに含まれていますが、高麗人参や大豆のサポニンは、健康食品として有名です。お茶にも含まれていて、抹茶が泡立つのもサポニンが入っているためです。また、ウーロン茶などの入ったペットボトルを振り回して泡立ってしまい、その泡がなかなか消えなくてびっくりしたことはありませんか。これもサポニンのしわざです。さらに、サポニンは咳きを鎮める作用があり、薬に使われています。宣伝文句にもなっていますね。
ただ、汚れが落ちる原因がサポニンだけとは言い切れない部分もあります。パスタすなわち小麦粉の主成分であるデンプンは、糊のもとでもあるわけですから、吸着作用があるはずです。 パスタは、化学的に合成されたものではありませんから、成分は複雑であり、その中でこの2つの要素がともに汚れに作用すると考えられます。