ふしぎしんぶん
だい90ごう しぜんの ふしぎ

植 物 の 話

今回、コウスケ君が読んでいる絵本は、エッツの「わたしとあそんで」。少女が林の中の池の畔にじっと座っている風景が続きます。池の周囲の植物は始めのまま、一種類ずつ虫や動物が少女の側に寄ってきて、だんだんメンバーが増えていきます。ラストのみんなに囲まれた少女の笑顔が印象的。心温まる名作です。
とこらで、木や花ははじめからじっとわたしたちの側にいてくれるので、その存在を意識しないことが多いものです。動物は文字通り動くもの。側に寄ってきてくれなければ、よく見ることはできませんが、たいてい近づくと逃げていきます。私達が木や草のようにじっとしていると、動物達も怖がらずに寄ってきてくれる場合が多いようです。動物は木や草のことは警戒していないのですね。
では、私達が木や草に対して、あっ・・・と目を向け、その存在をはっきり意識するのはどんな時でしょう。花が開いたり、緑の芽がのびてきたり、そんな変化がある時ではないでしょうか。
「花はいつ咲くの?」一気にあたりが花に満ちあふれてきたこの季節、加藤先生が開花時期について原稿を寄せてくださいました。
『北風が吹いた寒い冬が終わり、今年も春がやってきましたね。暖かな日差しを感じてふと道端に目を留めると、ホトケノザなどの雑草がもう蕾をつけているのに気がつきます。オオイヌノフグリやカラスノエンドウ、セイヨウタンポポ、カントウタンポポ、ナズナなど道端の雑草もいつのまにか賑やかに咲きそろっています。



昨年のふしぎしんぶんでも紹介されたいわむらかずおさんの「14ひきのぴくにっく」にも春の野草たちが繊細なタッチで描かれています。
植物の中には春の陽に導かれて花を咲かせるものがあり、これは、陽の長さではなく、夜の短さに反応して夜が短くなると花を咲かせます。こういうタイプの植物を長日植物といいます。地球上の生育分布でみると、温帯や寒帯にかけて生育しています。
北欧に咲いている花は、ほんの数ヶ月の暖かい時期に花を咲かせて子孫を残したいわけですから、日が長く暖かい春に花を咲かせる長日植物のけなげさが伝わってくるような気がします。
反対に夏になり、夜が長くなると花を咲かせる植物を短日植物といいます。こちらは、亜熱帯から温帯にかけて生育しています。小学校でも理科の授業で育てるアサガオは、夏至を過ぎて開花する短日植物です。夏至の頃は日長が約15時間、夜の長さは9時間ぐらいですが、アサガオは夜の長さが9時間以上で開花するので、夏至を過ぎて7月頃鮮やかなアサガオの花を楽しめるのです。

 




夏至の夜の長さが9時間というと、皆さんの中には、夏至より前にも夜が長い時期があると思われる方があるでしょう。
夏至の夜が一番短いわけですから、夏至より前の6月初旬でも夜の長さは9時間以上あります。
ですが6月初旬頃の気温はアサガオにとって低いので、花を咲かせることができないのです。
それでは、植物は、これらの日の長さ・夜の短さを体のどの部分で感じとるでしょうか。
植物は、夜の短さを葉っぱで感じとります。葉で感じとった光の情報を、蕾をつける芽に伝える物質が長い間分からなかったのですが、2007年に「Hd3a」タンパク質であることが、日本の研究者により、短日植物のイネで確認されました。
今年も植物の開花に関して新しいことが分かるかもしれませんね。

植物は、夜の長さや気温に応じて花を咲かせますが、これらの環境要因が整っていても、遺伝的に生殖が可能になる時期にならなければ花を咲かせることはできません。植物の成長が十分でないときは、花を咲かせることを抑制する遺伝子が働き、成長するに従ってその遺伝子の働きが少なくなっていきます。
人間も生殖にふさわしい年齢があります。植物の場合も、生殖にふさわしい時期があり、その時に、夜の長さや気温の条件が整えば、花を咲かせることができるのです。』


加藤先生の原稿をいただいて、絵本の少女の傍らに開いていた花は、何時ごろに開いたのかな・・・などと、ちょっと楽しく想像してみたりしました。
さて、動物のお話はまたの機会に譲ることにしましょう。動物は種全体が長命で大きく元気に変化していくと、生殖率が減り種の保存能力が低下する傾向が見られるなど、最近は気になる話題も出てきていますから。いずれにせよ、自然は多様な生き物が共存する世界。ひとつとして同じものがない反面、すべての生き物がそれぞれのあり方で生きて、いつか必ず死ぬという大枠は共通です。これだけは忘れてはいけないことだと思っています。

 

 

 


今月の話題より・・・
ちょっと変わった絵本の楽しみ方

自然と触れ合う時間が、徐々に減ってきている。そんな子供たちにも、まるで自然の中にいるような気分にさせてくれる絵本をご紹介いたします。「わたしとあそんで」(福音館)本文にもでてきました。じっとしていると、森の動物たちがみんな遊んでくれる。自然との共存をわざとらしくなく示す絵本です。「もりのかくれんぼう」(偕成社)ケイコは公園からの帰り道、見たこともない森に迷い込みます。そこで出会ったのは、かくれんぼうという名の男の子…。でもここに、こんな森があったかしら?「木のうた」(ほるぷ出版)一本の木と、それをとりまく生命を描いた絵だけの絵本。大人が読んでも、感じ入るものがあります。

 

 

 

 

「はっぱのおうち」(同)雨が降ってきました。さちははっぱの下に隠れます。すると、そこにはカマキリやチョウチョや蟻まで。ここはみんなの葉っぱのお家。「なんだかうれしくなってきた」(佼成社)ぼくの友達、かえるや蛇やトンボさん。お父さんとお母さんとドライブに行くから、彼らはお留守番かと思いきや、みんながついてきて、ぼくはうれしくなってくる。「ブナの森は生きている」(福音館)ブナの森の中を描きながら、その様子を語りかけるように書く絵本。木が死に、そして新たな若木がそだち、鳥やチョウチョが生まれ、はぐくまれる。森というひとつの世界の中で、命は互いに助け合いながら生きています。